私のお気に入り、グレーの訪問着

私は、親戚に着物の着付け先生がいたということもあり、振袖以外にも、割と早い時期に、喪服、それに柄物と無地の訪問着を1枚づつ買ってもらっていました。
中でも、柄物の訪問着が、とても気に入っていたということもあり、友人の結婚式に何度も活躍しました。

今は大好きな訪問着ですが、購入当時は、あまり好きではありませんでした。
というのも、叔母に伴われて、行きつけの呉服屋に、妹と両親で訪問したのですが、少々癖のある年配の女将さんは、私達の意見を聞くまでもなく、私と妹の雰囲気をみて、勝手に訪問着を決めてしまいました。
私は地味なグレーで妹は可愛らしいピンク。私はショックを受けて家路につきました。

それから数年たったある日、お茶の先生をしている友人が、着物をみせてほしいとやってきて、その友人の結婚式にぜひ着てきてほしい、と頼まれました。
当時の私は仕事が忙しく、結婚式用の洋服を選ぶ時間もなかったので、快諾しました。
いざ着付けを終えてみると、驚いた事に、ものすごく似合っているのです。
地の色はグレーですが、淡い色合いで、可愛らしい小花はあらゆる場所にちりばめられ、なんといっても、足もとの裾の裏側に描かれた花模様は、歩くたびにチラチラと控えめに見え隠れし、密かに女将さんが選んでくれていたビビットなピンクの伊達衿も着物にピッタリで、一瞬でこの着物の虜になりました。

結婚式で友人は、「とても似合っているよ」と言ってくれ、加えて、「地味ものほど、帯や小物でガラッと印象もかえられて、面白いんだよ」とも言っていました。
女将さんに御礼を言わないと、と思ったのですが、残念ながら、その時には既に他界されておられました。

それ以来、三回、結婚式で着ましたが、評判も良く、袖を通すたびに、女将さんを思い出し、天国で見てくれているといいな?と思ってしまいます。